社会人になってから英語力を証明するには、TOEICのスコアを使うことが常識になりました。しかし、必ずしも「TOEICが高スコア = ビジネス英語能力が高い」とは言えません。
ビジネス英語を上達すれば、TOEICのスコアはあとからついてきます。この順番が、英語上達の最短コースです。
「TOEIC L&R」は社会人の英語力証明書
TOEICは、「Test Of English for International Communication」の略です。日本語では「国際コミュニケーション英語能力テスト」となります。
日本では、高校までは英検、大学生からはTOEICという流れが定着しました。
2019年度のTOEIC L&R受験者数は約220万人。いくつかのデータを組み合わせて、英検とTOEICの年齢別の受験者数をグラフにしてみました。
高校卒業の前後で、ドラスチックにシフトしているのがわかります。
※1:データソースは文末に記載。
TOEICの問題は、ビジネスでの会話が中心なので、中高生には適していないとされています。そのため高校卒業までは、英検が中心となってきました。
一方でTOEICは、一人ひとりの英語レベルが客観的スコアでみることができます。企業にとっては、英語力を比較する上でとても便利なツールだったのです。
TOEIC L&Rが、英語力の「ものさし」となった理由は次の3点です。
・日本企業の人事は英語面接できないので、数字で比較できるTOEICが主流となった
・企業内の昇進・昇格でも、役職によってTOEICのスコアを設定するようになった
就職活動、会社での昇進試験、転職活動において、英語力はTOEICの点数で証明することがすっかり一般的です。
日本の会社員にとって、TOEICが英語力の証明であることは揺るぎないものになっています。
TOEIC L&Rスコアが800点以下でも、ビジネス英語習得は可能
はたして、英語力はTOEICのスコアがすべてでしょうか?
ビジネスで英語が使えるレベルは、TOEIC L&Rのスコアが730~860点(※2)が目安とされます。
※2:データソースは文末に記載。
実際には、TOEICのスコアがこのレベルに達しなくても、「英語による高度なコミュニケーション能力」を身につけることは可能です。
英語というのはひとつのスキルであって、「英語ができる」だけの人材は海外ビジネスでは役に立ちません。基本的なビジネススキルと合わせもつことで、国際人材として通用するようになります。
「TOEICスコア」 ≠ 「英語による高度なコミュニケーション能力」
この二つは、同じ尺度ではないのです。
TOEICの問題では、ある程度限られたボキャブラリー、シチュエーション、善良な人たちとの広く浅い範囲での会話の中で出題されます。
範囲が広い分、スコア600点を取るのに覚えないといけない単語数は5,000語と言われています。800点なら8,500語、900点なら10,000語となります。
単語数だけみても、点数を上げてゆくためには、相応の時間をかけて学習する必要があります。
一方で、自分の仕事に関連する英語に限定したら、かなり範囲がせまくなります。出てくる単語も、自分が日本語でよくわかっているモノ・サービスの名前なので、すぐに頭に入ってきます。
例えば、パソコンを海外で販売する仕事の場合、下記のようなシチュエーションに対応できる必要があります。
取引条件(価格、数量、輸送条件など)
価格・数字
パソコンの基本スペック
交渉に関する基本フレーズ
上記に関するボキャブラリーを覚えておけば、最低限の交渉は可能となります。
5,000語もあれば十分です。何を聞かれるかも事前にわかっているので、シナリオも準備しておくことが可能です。
これらの商談で使うフレーズは、扱う品物・サービスが変わっても基本は同じです。新しく覚える商品のスペックを新たに覚えれば、どんどんボキャブラリーを増やしてゆくことが可能です。
実践で英語力をつけてゆくと、ボキャブラリー数も自然に増えてゆきます。昇進試験の為にに必要な750点ぐらいなら、簡単にクリアできるはずです。
TOEICで満点を目指して学習しても、「英語による高度なコミュニケーション能力」を身につけることはできません。しかし、逆は可能です。
最初に英語を習得する目的をはっきり決めることが重要です。それが実践的なビジネス英語なのであれば、最短ルートでそこへ向かうべきです。
TOEICでの高得点を目指してしまうと、もっと時間がかかってしまう結果となるのです。
TOEICの勉強をしないでビジネス英語を習得する方法
ビジネスで英語を使うために必要な語彙数は10,000語と言われています。
TOEICと語彙数の相関は以下のようになります。
※3:データソースは文末に記載。
しかし、国際ビジネスマン全員が、TOEICスコア900点以上かというと、そうではありません。語彙数は多いに越したことはないですが、少しずつ必要な言葉を積み上げてゆけば良いだけです。
ビジネス英語を習得するためのステップ
② 英語を使う場所を確保する
③ 英語を使う場面をリストアップする
④ 各場面で使うフレーズを書き出す
⑤ 説明資料を自分で英訳・和訳する
⑥ 限定された場面でのフレーズについて、聞く、読む、書く、話すを反復練習
➀英語を勉強する目的をはっきりさせる
何のために英語を勉強するのかをはっきりさせると、その目的地への到着が早くなります。目的によって、やるべきことが変わってきます。
英語を勉強する理由は、人それぞれです。
・日本で外人の彼氏、彼女を作りたい
・仕事で外国との連絡をとることが増えたので英語がうまくなりたい
・昇進の条件でTOEIC800点とらないといけない
・海外赴任が決まり、急いで英語を習得する必要がある
・ブロードウエイでミュージカル俳優(女優)になりたい
これらの目的に必要な英語レベルは、すべて異なります。それぞれのニーズにあった学習プログラムを考える必要があります。
②英語を使う場所を確保する
英語は、ある程度は自分との戦いです。もくもくと単語を覚え、シャドーイングを繰り返し、発音も矯正できます。
しかし、最終目的はライブで会話が成り立つこと。一人勉強と並行して、生の英会話をすることが一番効率的です。
英語を使う場所をみつけるには以下のほうな方法があります。
コストを抑えてオンライン英会話で毎日話す
Club Houseで海外のClubに参加する
インドレストラン(英語圏のレストラン)へ通い、店員と会話する
社内にいる外国人社員と仲良くなる
英国展や北米フェア、外国大使館のイベントなどに行って、外人の店員と値段交渉(今はコロナでいませんが)
近くのイングリッシュパブ、アイリッシュパブへ行く(これも今はいけない)
最後の手段は、お金をかけて英会話ですが、コロナ下でも外国人は存在します。話すチャンスはアイディア次第です。
③ 英語を使う場面をリストアップする
➀の目的に従って、英語を使う場面をリストアップします。
海外出張で英語を使いたいという場合は以下のような場面があります。
会社紹介のプレゼン
相手のプレゼンを聞いて質問する
販売する商品・サービスの説明
価格提示と交渉
取引条件の交渉
納期の説明
契約書内容の交渉
空港などでの英会話は、最悪は筆談でもなんとかなるので、あまり考えなくても大丈夫です。
④ 各場面で使うフレーズを書き出す
③でリストアップした場面で使うフレーズを、リストアップします。英語の教材やネットで文例を探すのもいいです。
⑤ 説明資料を自分で英訳・和訳する
会社説明や商品説明はキモです。ここは時間をかけて会社案内や商品カタログを一字一句自分で翻訳してみましょう。これをやると、ボキャブラリーが増えます。(Google翻訳を使うと勉強にならないので注意!)
仕入れ交渉の場合は、相手の英語資料を日本語に訳してみましょう。
これは予習です。やっておくと、本番ではある程度スムースに会話を進めることが可能となります。
⑥ 限定された場面での英語フレーズについて、聞く、読む、書く、話すを反復練習
リストアップしたフレーズは、見ないでも出てくるくらい練習します。
ビジネスの場合は、いつも同じような単語を使います。基本のフレーズを覚えてしまえば、いろんな場面での応用ができます。
➀~⑥を、いろんな場面で繰り返してゆくと、ボキャブラリーは増え続けます。結果として10,000語程度はあっという間に達成して、TOEIC L&Rで800点以上取れるようになっているはずです。
ビジネス英語を習得する為にTOEICは必修ではない、近道を探せ!
留学をするときは、カリキュラムについてゆけるかを判定する為に、英語力を証明するTOEFLかIELTSのスコアを提出する必要があります。
TOEFLのスコアが高くても、現実の海外生活では、毎日英語での苦労は続きます。1年ぐらい継続してようやく一通りのことがじゃべれるようになります。
この、上達の過程で、TOEFLを再度受ける必要はないですよね。授業できちんと講義が理解できて、発言できて、論文をかけるのであれば、目的を達成しているんです。
会社に入社すると、昇進や、自己啓発目標にTOEICのスコア〇〇点という基準があったりします。
意識高い系の方は、自分の目標としてTOEIC 900点とか、満点とるぞと意気込む人もたくさんいます。もはやTOEICという競技で、優勝を目指すことが目的になっています。
それで楽しいとか達成感を得られるのであれば、問題ありません。
しかし、ビジネス英語を習得するという目標があるなら別です。TOEICは、上達のバロメーター程度に考えておいて、1年~2年に1回受験すれば十分です。英語上達には時間がかかるからです。
仮に数年年間海外留学をしても、TOEICで990点満点をとっても、ビジネスで英語を使いこなすためには、さらに2~3年の経験が必要になってきます。
つまり、実際にビジネスで英語を使う時間が2~3年必要です。この後でTOEICを受ければ、スコア800点ぐらいは、特に勉強しなくても取れるレベルになっています。
➀TOEIC 800点達成(2年) → 英語を実践で使ってビジネスレベル到達(3年)=5年
②英語を実践で使ってビジネスレベル到達(3年)+TOEICは年1回受験(勉強なし)=3年
これは、英語学習において、何にフォーカスを置くかということです。
英語は何かをするために習得するスキルです。英語を学習すること自体が目的となるのであれば、それは趣味とかスポーツ的な娯楽になります。
もし、英語を習得する目的がはっきりしているなら、最短距離でまっしぐらに目的に向かうべきです。
※1参考資料:
英検受験者数のデータ元: 日本英語検定協会HP
TOEICの学生/社会人の受験者数データ: ETSのレポート
TOIECの18歳以下受験者数が0.1%との推定: Weblio英会話コラム
TOEICの2019年度受験者総数: 国際ビジネスコミュニケーション協会
※2参考資料:
国際ビジネスコミュニケーション協会資料 Proficiency Scale
※3参考資料:
語彙数とTOEICスコアの相関はケイティ ランゲージ コンサルティングの「ビジネスで必要な「英語の語彙数」の目安は?」から引用